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黒山羊グループ業務日誌

黒山羊エンタティメントグループの業務日誌です。

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ENGAGE学園

ENGAGE学園
教師:
ネロ(校長)
柔(教頭)
フリーマン(社会科)
グローリィ(国語)
ミヅキ(美術)
マリーツィア(情報系科目)

三年生:
アルテミス
ベアトリーチェ

二年生:
ミカミ
オレンジボーイ
ライオット
エレクトラ





 エンゲージ学園というのは、レイヴンズアークがレイヴンの養成を目的として設立した学校である。何故レイヴンの養成が必要なのかについては諸説あるが、エンゲージ学園というのはレイヴンを目指す少年少女のために存在する高等専修学校であるということを覚えておいてもらいたい。
 またあくまでも高等専修学校であり高等学校ではない。よってエンゲージ学園に通うだけでは高等学校卒業資格はおろか、大学校入学資格すら得られないという問題点があるのだが、この問題は技能連携というシステムを使用することによって解決されている。技能連携というのは、つまり二つの学校に同時に通うものであると思っていただければわかりやすいだろう。エンゲージ学園に通う生徒は、それと同時に通信制である私立倉高等学校にも通うことになるのだ。そうすることによって高校と同じレベルの授業、そして高校卒業資格を得られるようになる。
 ただあくまでもエンゲージ学園は高校であり、レイヴンの養成を目的にしているとはいえ中心になっているのは通常の高校とはなんら変わることの無い授業が受けられる。
 レイヴン、つまりはACのパイロットを養成しているというだけあって三大企業も大いに注目しているらしい。三大企業は多大な額をエンゲージ学園に寄付をしている。そのためか学費は非常に安く、授業用のAC操縦シミュレーターも豊富にそろえられておりレイヴンを目指すにはなるほど良い場所であろう。余談ではあるが、黒山羊観光という名の旅行会社も小口ではあるが寄付を行っている。そのため、林間学校や修学旅行などは全て黒山羊観光の手によって行われるのだ。
 なお、エンゲージ学園で学べるのはレイヴンとしての知識・技術だけではない。レイヴンを目指すACパイロット科の他にも、整備士を目指す整備科、オペレーターを目指す情報科が存在している。実はこの中でACパイロット科が最も生徒数が少ない。逆に多いのが整備科である。手に職を、と考える生徒が多い証拠なのだろうか。ACパイロット科は八〇人ほどしか生徒がいない。
 人数だけ聞けば寂しいところだと思うかもしれないが、レイヴンという生半可でなく危険な職業に就きたいと思う生徒の大半は非常に個性的で、普通の高校よりも色濃い学生時代を送れるのがエンゲージ学園ACパイロット科というところなのだ。
 しかしながら、同級生や先輩・後輩があまりに個性が強すぎて、濃い学園生活が少し辛くなる生徒も中に入る。ミカミもその一人だった。
「あ~あ、眠い……」 
 欠伸をかいて、さも眠たいのだといわんばかりの表情でミカミはつぶやいた。昨日、出されていた宿題をやるのを忘れてしまいほぼ徹夜に近い状態なのだ。いつも見ている深夜番組を見終わった後に寝ようとし、そこで宿題をやっていないことに気づき大慌てでやったのは良いのだが、終わったときは午前五時。空は既に白み始めていた。朝の七時には起きて仕度をしないとホームルームに間に合わないのだ。
 ミカミの担任教師であるグローリィは時間に厳格で、チャイムがなる前には必ず教室に来ている。よって生徒たちには不評なのだが、グローリィの授業はポイントが絞られており、非常にわかりやすい。また聞けば必ず教えてくれるなど、中々に良い教師であるとミカミは思っている。
 ただ女性にだらしないところがあるという噂があり、ミカミが耳にしたところでいえば美術のミヅキ先生と情報科目担当のマリーツィア先生とで二股をかけているという。この目で見ているわけではないので信用がおけないのだが、ありえない話でもなさそうだと思っている。
 未だ眠い頭で腕時計を見てみれば、時間はいつもどおりである。普段から早めに登校して余裕を持たせているためなのだが、これならば後五分は眠ることが出来たなと思っていると、肩に軽い衝撃が加えられた。突然のことに加え、眠気もあって思わずよろめきそうになる。
「おっす、お早う!」
 背後からミカミの肩を叩いたのは同級生のオレンジボーイだった。また髪を染め直したのか、髪の根元まで名前の通りオレンジ色に染まっている。尚、校則では髪を染めることは禁止されており生徒指導のローレルから幾度と無く注意を受けているのだがオレンジボーイは聞く耳を持たず、どれだけ染め直されたとしても次の日には必ずオレンジ色に染めてやって来る。
「眠そうだけど、宿題でも忘れたのか?」
「あぁ、しかも運の悪いことにフリーマンのやつだったんだよ……」
「うっわぁ、そら運無かったな。ま、忘れるお前が悪い。で、宿題はできてんの?」
「徹夜で書いたよ、おかげで眠い眠い」
 いつものように挨拶を終えると、後はよくある話になる。テレビの話題になり、そこでミカミはいつも見ていたドラマを見ていないことを思い出した。あの深夜ドラマ『淫靡なる官能の日々』は毎週楽しみにしている番組の一つであり、見た翌日はいつもオレンジボーイとそれについて話をしている。タイトルはエロスに満ち溢れているが、内容は純愛である。まぁ不倫を題材に取り扱っているわけだが。
「お前なんで見逃してんだよ! 昨日は急展開だったぜぇ、ジェスが……」
「わぁー! やめろやめろ! ネタバレすんじゃねぇ!」
「何だよ、見て無いくせに」
「見て無いよ、あぁ見てないともさ! けれど、録画してる奴を探し出して見さしてもらうんだよ」
「あら、じゃあ私の家に観に来なさいよ。二人っきりで、み・ま・しょ・う」
 突如として後ろから抱きつかれる。背中にはっきりと、豊かな胸が押し付けられている感触があった。耳にはふぅ、と艶かしい熱い吐息が吹きかけられ背筋がぞわりとなる。慌てて振り払い一歩前に出て後ろを振り向くと、笑顔で首を傾げる先輩ベアトリーチェの姿があった。
「ちょっとベアトリーチェ先輩、やめてくださいよいきなり後ろからなんて」
「何よ、私とあなたの仲じゃないの。別に良いでしょ」
「特別な仲なんてありゃしないでしょ、もう」
 言いながら前に向き直り、歩き始める。さりげなくベアトリーチェはミカミの横に並んで歩き出し、オレンジボーイは一歩後ろを歩く形になった。オレンジボーイは「え?」なんて間の抜けた声を上げたが、ミカミもベアトリーチェもそんなことには気にせず歩く。
 ただミカミはこのままではヤバイと感じていた。学校への通学路はここから一本道で、小高い丘の上に立つ校舎は既に見えている。そこに行くためにはきつい坂道を登らねばならず、その坂道の前には十字路があるのだがそこで毎日のように必ずある人物と遭遇する。その人物とベアトリーチェの仲は何故か険悪であるため、できることなら会わせたくないと思うのだ。
 それにしても、何故あの人物といつもあの十字路で会うのか分からない。毎日可能な限り同じ時間に家を出るようにしているとはいえ、五分から十分ぐらいの差はある。だがいつもあの十字路で出会う。謎だ、と思っているうちに十字路が近づいてきた。大丈夫だろうかと不安に思うミカミを余所に、何故かベアトリーチェはミカミの左腕を掴むと体を摺り寄せてくる。
「何してるんですか?」
 冷ややかな目で腕を掴むベアトリーチェを見下ろすが彼女は動じた風も無い。振り払おうと腕に力を込めると、ベアトリーチェの豊かな胸が腕に当たる。
「いやん」
 わざとらしげな笑顔でベアトリーチェは黄色い声を上げる。止めて欲しいと思いながらも、この胸の感触を楽しむことが出来るのならばそれでもいいかなと思っていると、右側から刺すような殺気を感じた。全身が硬直し、一瞬で汗が吹き出た。まさか、と思いながら首を向ける。あまりの殺気に体が振り向くことを拒否しているのか、首の間接から軋むような音が聞こえる気がした。
 そこにいたのはアルテミスだった。何故かいつもこの十字路で彼女と出会う。長い金髪が逆立っているように見えるのは気のせいだろうか。彼女の青い瞳は、今は真っ赤に燃えている。
「貴様ら何をしている……?」
 蛇ににらまれた蛙、という言葉がふさわしいほどにミカミは動くことが出来なかった。アルテミスを見るのが精一杯で、口は動きそうになかった。それほどまでに彼女の殺気は強いのだが、ベアトリーチェは気にした風も無くさらにミカミに体を摺り寄せて見せた。アルテミスの殺気がさらに強くなり、もう泣きたい気分だった。
「ほぅ、こりゃ竜虎激突だね」
 後ろからそんなことをのたまっているオレンジボーイが憎たらしく思える。彼は傍観者の立場を貫き通せるが、ミカミは傍観者になることが許されないのだ。おぉ、神よ我を助けたまえ。
 アルテミスが一歩こちらに近づいてくる。殺される、ミカミはそう直感した。アルテミスの周囲は彼女の殺気によって歪んでみえた。あぁ、父よ母よ先立つ不幸をお許しください。ミカミが心の中で唱えた時だ、女神は現れた。
「ちょっと姉ちゃん、何してるのよ!」
 アルテミスの背後、彼女とよく似た少女が息を切らしながら現れた。少女の名前はライオットと言い、アルテミスの妹である。彼女の姿を見たとき、ミカミは助かったと思った。アルテミスはライオットに対して甘いところがあり、ライオットが何か言えば素直に聞き入れることが多いのだ。何とか彼女を味方に引き込まなければ、ここで死ぬ!
「ライオット……いや、あいつらがだな……」
「まったく! そんなことしても仕方ないのに、ちょっと耳貸して」
 アルテミスはライオットの言うことを素直に聞き入れた。ライオットがアルテミスの耳元で何かささやく。アルテミスは真剣な面持ちで頷きながら聞いている。何を言っているのだろうか。少なくとも、ミカミにとって良いものであることを祈るばかりである。
「分かった」
 そう言ってアルテミスはミカミに近寄ってくる。先ほどまでの殺気はもう無い。一体何をするつもりなのだろうかと考えていると、アルテミスはミカミの右腕を掴んで、抱きつくように体を摺り寄せた。
「両手に華だね」
 オレンジボーイはそう言うが、ミカミにとっては洒落にならない状況である。自分を挟み込む二人の女性は互いに殺気の篭った視線をぶつ交わせており、空気中で放電現象が起こっている。また二人の美女に挟まれているということで、同じく登校中の男子生徒たちから殺気の篭った視線でミカミは睨みつけられていた。
 眠いこともあり、ミカミはこれ以上先に進む気力が沸き起こらなかったが二人の美女はそうでもないらしい。ぐいぐいとミカミを引きずるようにして通学路を歩く。心臓破りの坂道と言われる、校門までの坂道もなんのそのミカミはひぃひぃ言いながら歩いていたが二人の美女はそうでもなく互いの視線を戦わせながら坂道を登る。
 登りきったところにあるのは校門で、そこには生徒会の役員が二人立っていた。一人は知らない顔だったが、一人はクラスメイトのエレクトラだった。彼女は校門を通る生徒達ににこやかな笑みを浮かべながら「おはようございます」と挨拶を続けていたが、ミカミ達にだけ「何してるの?」と怒気の篭った声で尋ねてきた。
「何って、通学」
 ミカミがそう言うと、エレクトラはミカミを挟む二人の女性に視線を向けた
「破廉恥だとは思いませんか?」
「はい?」
「何ですかその返事は! 朝から異性と腕を組んで登校するなど不純です、しかも二人とはあなたはそれでも男ですか! 恥を知りなさい恥を!」
 ベアトリーチェがエレクトラに対して言い返そうとするが、それよりも先にエレクトラが怒声を浴びせる。出鼻を挫かれたベアトリーチェは何も言い返せなくなってしまった。
「大変だなぁ……じゃあ俺はお先に」
 オレンジボーイはミカミ達を置いて先に進もうとするが、エレクトラに肩をつかまれ阻まれる。
「あなたもです、大体ですねあなたはこの間も髪を染めるなと言われたところでしょうに!」
「待て、委員長よ。これはいわゆるアイデンティティの問題という奴だ。俺の名前はオレンジボーイだろ? なのにオレンジ色じゃないなんておかしいじゃないか」
「それでも学園の生徒である以上は校則を守るべきです」
 そして言い争いへと発展し、チャイムがなるまで校門前で罵詈雑言の嵐が吹き荒れるのであった。尚、ミカミ、オレンジボーイ、エレクトラの三人はホームルームに遅刻した。

 

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プロフィール

HN:
倉佳宗
性別:
男性
職業:
黒山羊エンタティメントグループ総帥
趣味:
読書
自己紹介:
ホラーとファンタジーを愛する好事家。
流行のものは、よくわからない。